33.彼には彼なりの理由があったわけで

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「そうなんですか? でしたら尚のこと、私、マスターには感謝してもしきれませんねっ。就職してからはずっと行けてなかったですけど、これからはまたちょくちょくほたると行きた――、……んんんっ」  ――いです!まで言わせてもらえずに、私は宗親(むねちか)さんから半ば強引に唇を塞がれて、ただただ驚いて瞳を見開いた。  ソファに片足を乗り上げるようにして私に覆い被さった宗親さんから、後頭部をグッと押さえつけられて逃げられないようにされてしまう。それが、何だかとってももどかしいの。 「んっ、あ、はぁ、んっ、……ねちか、さっ、……ん、ぁ」  何とか「宗親さん」って呼びかけたいのに、それすらさせたくないみたいに話そうとするたび、舌を絡め取られて吸い上げられる。  やっと唇を離してもらえた時には、私、酸欠で涙目になっていた。  肩で息をしながら宗親さんをぼんやり見上げたら、とても悲しそうな顔をした宗親さんが「僕なのに……」って消え入りそうなほど小さな声でポツンとつぶやいて。  私はそれがどういう意味なのかちっとも分からなくて、気持ち悪かったから。  グルグルと宗親さんとの会話を思い出してみた。
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