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Misokaと宗親さんの――あ、今は私もか――のマンションは徒歩十分圏内。
車だとすぐだけど、歩くとまぁまぁの距離だ。
でもきっと、一人で歩いているからそう感じるだけで、宗親さんと一緒だったらあっという間に違いないの。
夕方とはいえまだまだ陽は落ちていない。
日中太陽に温められた熱いアスファルトの上を、長く伸びた影とともにテクテクと歩く。
颯爽と、といかないところが私の残念なところだけど、暑くてとてもそんな気にはなれないんだもの。仕方ないじゃない。
(髪、束ねてきて正解だったぁ〜)
いつもは下ろしている肩下ちょっとの長さのゆるふわウェーブを、出がけにふと思い立って左寄せのサイドテールにしてみたのだけれど。
歩くたび、ポインポイン左肩で揺れる髪の毛に、少しだけリズムをつけられたように足が軽くなる。
(Misokaの中涼しいかなぁ)
お店だもの。
空調はきいているはず。
前方に見えてきた『Bar Misoka』と書かれた控えめな丸い突き出し看板は、中にLEDライトが入っていて、夜に見るとぼんやりと宙空に浮いて見える。
だけど今はまだ明るいので、ただの丸い白地に手書きみたいに味のある太字の筆記体が踊っているだけという、割と地味な印象だった。
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