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(指輪……? 宗親さんからの?)
康平が睨むように見ている私の左手薬指には、未だに私自身怯んでしまうような煌びやかな宝石たちが惜しみなく使われた、手の込んだ装飾の婚約指輪が光っている。
それが、康平に見えないわけがなかった。――というより、宗親さんの中では目立ってなんぼ、みたいな狙いさえある指輪なのだから見えて当然だ。
グイッと左手を掴み上げられて上方に引き上げられた私は、康平との二〇センチ以上の身長差も相まって、まるで釣り上げられた魚みたいになって。
さっき右手を掴まれていた時の痛みなんて比にならないぐらい力任せに握られた手首に激痛が走った私は、泣きたくなんてないのに目端に涙を滲ませてしまう。
「こうちゃっ、痛いっ」
つま先立ちで一生懸命康平の胸元をバシバシ叩くけれど、彼はそんなの全然意に介した風ではなくて。
「俺と別れてそんなに経ってねぇのに何でこんなん付けてんだよ。春凪、お前、もしかしてずっと二股かけてたのか?」
だからあんなにアッサリ俺との別れを受け入れたんだな、とか手前勝手なことを言われて身体を乱暴に揺さぶられた私は、何でそんなことを言われなきゃいけないの?と、悲しくなって康平を睨みつけた。
(私、付き合っていた頃は全身全霊で貴方に尽くしたよ?)
そう思ったら情けなくて堪らなくなる。
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