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「俺、お前を信じてたのに最低だな」
(最低なのはどっち?)
思ったけれど、それを言うのも億劫なくらい、康平とは話す価値もないと思ってしまった。
そんな私を置き去りに、康平が
「けど、まぁいいや。これで全部チャラにしてやるよ」
言って、私の左手薬指から指輪を抜き取るから、一気に血の気が引くのを感じた。
「返して!」
それは宗親さんが私にくれた大事なものなの!
そう思うのに、康平は私の指輪を高く掲げて意地悪くニヤリと笑って。
「こんな高そうなモン、失くしたとなったら婚約破棄かもな?」
宗親さんはきっと、そうなったとしても私を見限ったりはなさらない。
そう思うのに、心のどこかで「でも」と思う自分もいて怖くなる。
何より、宗親さんから頂いた大切なリングを奪われるなんて我慢できなかった。
「まあ、さ。婚約解消されたら俺が結婚してやるから。行き遅れる心配だけはしなくていいぞ?」
必死に指輪を取り返そうと飛び跳ねる私を突き飛ばして、康平がとんでもないことを言う。
「何で今更そんなこと……」
怒りに震える声でそう言ったら、「お前の実家、男が権力持てるんだろ? 最高じゃん!」って……この人は一体何を言っているの?
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