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そもそもそれは宗親さんと出会う前の柴田家の話。
今の柴田はそんなじゃないのに。
「康平、色々思い違いしてる」
キッと彼を睨み付けながら、怒りに任せて康平を壁にギュッと押し付けたら、「春凪、ちょっと会わないうちに大胆になったな」ってクスクスと笑われて、そのまま康平に抱きすくめられてしまう。
「イヤッ! 離して!」
「俺に先に密着してきたの、春凪の方だろ? ――それにしてもお前、いい匂いだな」
言葉と同時、頭に鼻先を押し当てられて、髪の毛の匂いを嗅がれる気配がして、全身が怖気立った。
「この指輪はさ、俺が売って俺たちの門出の資金にしてやるから……年の離れたオッサンなんかとはさっさと別れて俺と結婚しようぜ? な?」
康平は完全におかしくなっている。
そう思うのに、私を捕まえる彼の腕から逃れる術が見つけられなくて。
それでも私は必死に身体をよじって康平の拘束から逃れようと抗った。
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