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転んだ拍子に肩にかけていたバッグが飛んで道の方へ滑り出て。乗るあてはない癖にいつも持ち歩いていた真っ赤なハートのチャームキーホールダーが付いた、愛車のキーがカバンから飛び出したのが見えた。
他にも何か出てしまっているかもしれない。
早く立ち上がって拾わないと!って思うのに、膝が痛くて思うように立ち上がれなくてよろめいてしまった。
痛みに負けてモタモタしていた私が悪いのかな。
「春凪、急に引っ掻くとか酷くね?」
グイッと肩に手を掛けられて、私は路地裏で仰向けにひっくり返されてしまった。
私の怪我なんてお構いなし。
血が流れ伝っている膝に一瞥も与えないまま、康平が私を押さえ付けるように馬乗りになってくるから……。
私は「イヤッ!」って拒絶の声を出そうとして、グッと口を片手で塞がれてしまう。
そうして心底面倒臭そうに「騒ぐなよ、うるせぇな」って睨みつけられた。
(騒がれたくないならこんなことしなきゃいいのに!)
そう思うのに、一生懸命もがいてもびくともしない圧倒的な力の差が怖くて、身体が萎縮してしまう。
「お前、さっきからちっとも可愛げがねぇからさ。ここで最後までシちまおうと思うんだけど、異存はねぇよな?」
ニヤリと笑って脅迫まがい。私に指輪を見せつけると、それをポケットに仕舞うついでみたいに携帯を取り出してこちらに向けてくる。
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