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恐る恐る口から手を離してみて、私がギュッと唇を噛み締めるようにして声を抑えていることに安堵したみたいに、康平が「素直な春凪、好きだぜ?」と付き合ってきた時みたいに頭を撫でてくる。
あの頃はそれだけで酷いことを言われても不思議と許せていたけれど、今はただただ気持ち悪いとしか思えなかった。
ふいっと視線を逸らせた私に、康平が舌打ちをして。
「撮ったヤツさぁ、お前のフィアンセには見せてやってもいいかなって思ってんだけど」
と、意地の悪い笑みを浮かべる。
「ダメッ!」
私が思わず康平の方を見てそう言ったら、「誰が喋っていいって言った?」と首をグッと締めつけられた。
人に首を絞められたことなんてなかった私は、苦しさよりも恐怖で涙目になって。
(宗親さんっ、助けてっ!)
無意識に、心の中で必死に宗親さんに助けを求めた。
宗親さんが、どのくらい遅れてここへいらっしゃるのかは分からない。
でも、なるべく早く用事を切り上げると言っておられた彼を待たなかったことを、今更のように後悔してみても遅いよね。
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