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〝ボタン、とめないと〟って思うのに、宗親さんの首に回した腕を解くのが。
ううん。彼から手を離してしまうのがすっごく怖くて出来ないの。
きっとそういう優柔不断さが全ての元凶なんだよねって思ったら、胸が締め付けられるように苦しくなった。
***
「いらっしゃいませ。――って、オイ、織田っ、何事だ⁉︎」
宗親さんがドアベルの音を響かせて薄暗い店内に入った時、Misokaに連れて来られたんだって思って。
泣きじゃくってボロボロの顔を明智さんに見られたら、って恥ずかしくなった私は、宗親さんの肩口にしがみつくみたいにぎゅうっと額を押し当てた。
だけど血まみれになった足は隠せなかったみたいで、「ちょっ、柴田さん、怪我してんじゃん!」と慌てる明智さんの声が耳を揺らす。
幸いまだ開店直後で、バーという要素の方が強めなMisokaの店内には、私たち以外のお客さんは来ていなかった。
「裏、借りますよ」
宗親さんは勝手知ったる他人の家さながらにそう告げると、カウンター奥の扉に向かって。
「ああ。別に構わねぇけど……お前事情ぐらい説明……」
言い募ろうとする明智さんに、宗親さんはピシャリと「明智、店の横の路地、防犯カメラぐらい設置しとけよ」と怒気を滲ませる。
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