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「ごめ、んなさい……」
バックヤードに入るなり私はギュッと胸元を押さえて、絞り出すように謝罪の言葉を紡いだ。
未だワンピースの前開きボタンはだらしなく開けられたまま。
早く留めたいのに手が震えて上手く出来そうになかったから、私は胸元を息苦しいほどにきつく、締め上げるように押さえ付けた。
「何故春凪が僕に謝るんですか?」
宗親さんはとりあえずといった様子で休憩室に置かれた椅子に私を座らせると、傷口の様子を確認するためだろう。目の前にしゃがみ込んだ。
「やはり綺麗に洗った方が良さそうですね」
ポツンとつぶやくと、宗親さんは休憩室の更に奥にある店外へ続く扉の施錠を開けると、再度私を抱き上げる。
「外に水道があります。そこで傷口を洗い流しましょう」
私は宗親さんにされるがまま。
胸元を押さえる手はそのままに、もう一方の手で彼の首筋にしがみついた。
外は真っ暗だったけれど、不思議と宗親さんと一緒だと怖くなくて。
さっき、この近くの路地であったことを思うとゾクリと身体が震えたけれど、それを察したように宗親さんがずっと私のどこかに触れていて下さるから本当に心強かった。
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