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「少し……沁みますよ?」
宗親さんは私を立ち水栓そばの水栓パンの中に立たせると、ご自分の肩に手を添えるように仰ってから、オープントウのサンダルを脱がせてくださる。
そうして水道の蛇口をひねると、痛くないように、という配慮からかな。
勢いよくジャーッと流れ出た流水を調整して弱めると、「冷たいけど我慢してくださいね」と言って傷口に水を当てた。
水に触れてすぐは確かに冷たいって思ったけれど、夏だしそんなに辛くない。
感覚が麻痺しているお陰かな。
沁みるって言われたけれど、全然痛くなくて。
(血まみれで汚いな)
とか
(鉄臭いな)
とかどうでもいいことばかりが頭の中をグルグルした。
「ごめんね、春凪。砂が落ちないので少しこすりますね」
言われて宗親さんの手が、私の傷口に優しく触れて。
「――っ」
さすがに傷口に触れられた時はほんの少し痛かったけれど、我慢できないほどじゃない。
宗親さんはスマホのライトで私の傷口を照らすと、「綺麗になったかな」とつぶやいて。
同じようにもう片方の足も、丁寧に洗ってくださった。
「足拭きますよ?」
私を連れ出してくれた時にあらかじめ一緒に持ち出していたのかな。
真っ白な真新しいタオルで傷口を避けるように丁寧に水気を拭き取ってくださると、宗親さんがもう一度私を抱き上げる。
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