2.通りすがりのハンサムさん

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「私、もう一生男の人の前では服脱がないっ!」  全てのものが琥珀色に染まる薄暗い店内に、聴こえるか聴こえないかの音量で、物静かなクラッシックが流れている。  カウンター席が10席と、テーブル席が3つの小ぢんまりとしたバー『Misoka(ミソカ)』の隅っこ。  本当はテーブル席がよかったのだけれど、週末ともなれば結構満席で。  予約なしで飛び込んだ、私と友人の坂本ほたるは仕方なくカウンター席に横並びで座って飲んでいる。  彼氏に振られてからこっち、私、スカートを履いていない。  パンツルックはあまり好きじゃないって彼が言うからずっと我慢していたけれど、それだってもう守る必要なんてないもの。解禁よ、解禁。  今日だって、サファリロングコートの下に、白いVネックのTシャツを着て、グレイのイージーワイドパンツを履いてるの。  足元だって、パンプスはやめてスニーカーというカジュアルな出立(いでた)ち。  ほんわかふわふわなフェミニンを意識しまくっていた、ちょっと前の私とは大違い。  就職が決まっている、市内ではそこそこ名の知れた六階建の持ちビルに入った建設会社『神代組(かみしろぐみ)』の事務職は、制服が支給されるみたいだから、否応なしにスカートを履かないといけないみたい。だけど、仕事とプライベートは別の話。  今はね、元カレの好みに合わせてスカートばかり履いていた自分と訣別をはかりたいの。
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