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「まだ、血が滲んできてますし、中でちゃんと止血しましょう」
(ああ、この人はいつも卒なく物事をこなすな……)
泣きすぎてぼんやりした頭で、宗親さんが私を連れ出す際、濡れた足を拭くタオルまで準備してくださっていたことに感心してしまう。
「最近はね、消毒液は使わないんだそうです」
私の傷口を、スチールラックから取り出した真新しいタオルで押さえて止血すると、同じ棚の違う段からラップを引っ張り出してゆっくりと傷口に当てる。
「ゴワゴワして痛いかもしれないですが、少しの間辛抱してくださいね」
言いながら当てたラップの四辺をテープで密閉するみたいに綺麗に留めて。
「傷口にはガーゼを当てたりせず、こんな風にラップで保護する方が治りが早いし綺麗に治るんだそうです。家に帰ったらちゃんとした傷口用の湿潤パッドに貼り替えましょうね」
建設業という仕事柄、怪我をする人も少なくないからと、宗親さんはそういう知識も普段からしっかり学ぶようにしておられるらしい。
私は、指輪を奪われてしまったのにちっとも責めていらっしゃらない宗親さんに、段々不安になって。
さっきまであんなに怒っていらしたのにまるでそれを押し隠すみたいに傷の手当ての事ばかり仰るのも気になった。
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