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宗親さんは、私には怒っていないとおっしゃったのに、完全に彼の空気感に呑まれて、何か乱暴なことをされるんじゃないかと怯えて。
宗親さんが私にそんなことするはずなんてないと頭では分かっているのに、さっき康平に酷い目に遭わされた事が、心の片隅でずっと澱のように停んで、私をいつまでも離さないの。
宗親さんはそんな私の様子に伸ばしかけた手を宙空で躊躇いに揺らせると、グッと拳を握り込んでから、気遣うようにやんわりと私を抱きしめた。
「宗、親、さ……?」
その身体が小さく震えているのに気が付いた私は、抱きしめられたまま宗親さんを恐る恐る見上げる。
「――ごめんね、春凪。僕がキミを一人にしたばっかりに」
宗親さんの声が今にも泣き出しそうに聞こえて。
私は彼の腕の中で一生懸命首を横に振った。
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