36.一番大切なのは*

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宗親(むねちか)さ、んはっ、悪く、な……ぃ、ですっ。宗親さ、が来て下さ、って……私、本当に嬉しか、ったし、ホッとし、たんです……! ――だって、あ、のまま、だった、ら、私、きっと……」  無意識にそこまで言って、康平がいやらしく胸に触れてきたのを思い出した私は、身体を震わせながら肌蹴たままの胸元に添えた手にギュッと力を込めた。 「宗親さ、私、……あの人に触ら、れたところが、全、部……気持ち悪、い……。お、風呂、……入り、たい……」  そう口走った後、今からほたるが来て、彼女の恋の後押しをする約束だったのに。私は何て自分勝手なことを言ってるんだろう、って頭の片隅に引っ掛かって。 「あ、でも……ほた、る……」  うまく考えが整理出来ないままに、頭に浮かんだことを次々と脈絡なく口に乗せたら、宗親さんが私を抱く腕にギュッと力を込めた。 「こんな時なのに、キミは友達のことを気にしちゃうんだね……」  宗親さんは吐息混じりに、でもとても愛し気にそう落とすと、私から少し離れてスマートフォンを操作なさって。
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