2313人が本棚に入れています
本棚に追加
「今、タクシーを呼びましたので、とりあえず外に出ましょう」
「でも……」とおろおろソワソワする私に、「大丈夫ですから、僕に任せて?」と優しく微笑むと、再度私を横抱きに抱え上げて、店内に続く入り口に向かう。
私は宗親さんの腕の中、ギュッと服の胸元を握りしめたまま、呆然とそんな彼を見上げることしか出来なくて。
「明智、僕も春凪も帰らないといけなくなりました。――ほたるさんがいらしたら、いい加減ガツンと男を見せてください。動かないまま後悔したくないなら次に会う時までに良い話を僕と春凪に聞かせるように頑張るべきです。――いいですね?」
有無を言わせぬ口調の中に〝動けば『良い結果』になる〟のだと含ませて、宗親さんは「え、ちょっと待て、織田っ!」と呼びかける明智さんを無視して、店のドアを潜ってしまった。
「あれだけ発破を掛けたんです。いくら奥手な明智でもさすがに動くはずです。長い付き合いの僕が言うんだから間違いない。――だから春凪、どうか安心して家に帰りましょう? お願いだから自分を癒すことだけ考えて?」
最初のコメントを投稿しよう!