2313人が本棚に入れています
本棚に追加
宗親さんの言葉に思わずホロッときて視界がにじみ掛けた私は、慌てて彼から視線を逸らせる。
それでも私のために宗親さんが色々気遣ってくださっているんだと、切なくなるくらい伝わってくるから。
堪らなく嬉しくて、胸がキュッと締め付けられる。
「……あ、りがとぉ、ございます」
それだけはどうしても伝えなきゃいけないと思って、うつむいたまま震える声を必死に抑えながらお礼を言ったら、頭にふんわりと軽いキスを落とされる気配がした。
***
「だ、大丈夫です。ちゃんと歩けます」
タクシーで家に帰り着いて、車から降りるなり、また私を抱き上げてくれようとする宗親さんに、私はフルフルと首を振って自分の足で立った。
足の曲げ伸ばしで少しピリッとした痛みは走るけれど、両膝を擦り剥いたくらいで、いつまでもお姫様抱っこは恥ずかしい。
大体、経緯がショックだっただけで、怪我自体はそんなに大したものではないのだ。
それこそ子供の頃にはしょっちゅうやっちゃったような……その程度の擦過瘡。
それに、このマンションには二四時間体制でコンシェルジュがいるんだもの。
最初のコメントを投稿しよう!