36.一番大切なのは*

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***  部屋に戻るなり宗親(むねちか)さんにソファに座るように促されて、私はシャワーに直行したい気持ちを賢明に押さえつける。 「お風呂場で濡れたら沁みるでしょう?」  言われて、救急箱を取ってきた宗親さんから、先ほど応急処置で当てられたラップを取り払われて。 「幸い傷自体はそんなに大きくないみたいでホッとしました。傷口も綺麗に洗い流せてるみたいだ」  言われて、傷口をすっぽり覆い隠してしまう湿潤パッドをあてがわれて。 「一応上から防水フィルムもかけときますね」  まるで看護師さんみたいに、手際よく私の傷口を覆ってしまう。 「あ、あの……本当に何から何まで……有難うございます」  ラップで(くる)まれていた時より痛くない気がするのは、傷口に触れる部分が柔らかな素材に変わったからだろうか。 「じゃあ、あの……私、お風呂へ……」  ギュッと胸元を握りしめたままの手が、段々感覚を失ってしまう程度には私、力を入れてそこを閉じ続けているみたい。  早くこの服を脱ぎ捨てて、全部全部リセットしたい。  そう思うのに、立ち去ろうと(きびす)を返したところで、宗親さんに手を握られて引き止められてしまう。 「あ、あの……」  ――まだ何か御用がおありなんでしょうか?  戸惑いに揺れる目で宗親さんを見上げたら、そのままグイッと引き寄せられて、彼の腕の中に閉じ込められた。
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