36.一番大切なのは*

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 恥ずかしさと照れ臭さにギュッと縮こまった私をほぐすみたいに、浴室に入るなり宗親(むねちか)さんが所在なく立ち尽くす私の唇に優しく口付けを落とした。  お湯になるのを待つためかな。  そっぽを向かせたままコックを捻られたシャワーヘッドから、まるでノイズのようにシャーッという流水音が流れ続けている。  それがぼんやりとした頭に心地よく響いてきて、私は宗親さんからのキスにうっとりと身を委ねて。  宗親さんの唇が、首筋に降りてきたのを感じて「んっ」と小さく喘いだら、「春凪(はな)は本当に可愛いね。大好きです」と、宗親さんが熱のこもった声をすぐ耳元で吹き込んでくる。  大好きな宗親さんの低音イケボで告げられる「大好き」はじんわりと私の心に染み込んで、傷ついた心を優しく包み込んだ。  まるで麻薬みたいな彼の声にうっとりと身を(ゆだ)ねていたら、チクッとした甘やかな痛みが首筋に走って、私は宗親さんがそこにキスマークを残したんだとぼんやりと思った。  その行為は首筋から手首、手首から胸へと続いて。  いつしか私は、直接当てられないままに湯気とノイズだけを撒き散らすシャワーで温められた壁に押し付けられるようにして、宗親さんからのキスを享受していた。  肌にチクッとした痛みが走るたび、康平から与えられた屈辱が吸い出されていくようで嬉しくて。 「宗親さ……」  ――お願い。もっとして?
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