37.落とし前をつけてもらいましょう

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【side宗親(むねちか)】  よりによって、夜に春凪(はな)出掛ける予定(デート)の日に社長から呼び出しとか。  何の嫌がらせだよ!と思った。  定時を過ぎてからの不自然な招集。  業務連絡ならばあり得ないことなだけに大体察しはついていたけれど、社長室に通されてみると案の定予想通りと言うべきか。  父・嵩峰(たかみね)が待っていた。  この会社――神代組(かみしろぐみ)の社長を部下か何かの様に斜め後方に従えた状態で父が言ったのは、なるべく早く身を固めてオリタ建設(うち)に戻ってこいという話で。  有無を言わせぬ口調で「式の準備や手配は全部オリタ建設(かいしゃ)がやる。お前は神代組(ここ)の引き継ぎを迅速に進めることだけを考えなさい」と付け加えられた僕は、小さく吐息を落とした。 「春凪(はな)との式は彼女の意向に沿うものをしたいと思ってるので、口出しするなというのは断固お断りいたします」  もちろん、僕だって社長の息子ということでオリタの方ではそれなりに責任ある立場に置いてもらっているのは心得ている。
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