37.落とし前をつけてもらいましょう

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 僕はぐっすり眠る春凪(はな)の愛らしい唇に軽くキスを落とすと、彼女を起こさないよう細心の注意を払ってベッドから抜け出した。  そうして〝珠洲谷(すずや)〟と名乗った、母と同年代ぐらいの実年女性に電話をかけたのだけれど――。 * 「織田(おりた)です。朝早くから申し訳ない」 『いえ、問題ございません』  名乗らなくてもきっと、僕からの着信だというのは相手にも分かっているだろう。  だからこそ、こんな開店前の(はやい)時間にも関わらず、にこやかに応答してくれたんだろうし。  そう思いながらも、僕は〝織田〟の一族であることを誇示するように、敢えて名乗りを上げると、早々に要件を切り出した。 「過日僕がフィアンセに送った婚約指輪なんですけど。あれはオーダーメイドの一点物で間違いなかったですよね?」 『もちろんでございます。――もしや商品に何か問題がございましたでしょうか?』
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