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「宗親さ……」
そんな僕をじっと見つめて春凪が泣きそうな顔をするから。
まだ気持ちの整理が付き切っていないんだな、と切ない気持ちになった。
そりゃあそうだ。
元彼が相手とはいえ、あんな怖い目に遭わされたんだ。
僕はカウンターから出ると、春凪のすぐ横に立って、彼女をスツールに腰掛けるよう誘導した。
「そういえば春凪。今朝ね、明智からメールが来たんですよ」
努めて明るい声で言って、メッセージアプリを立ち上げると、『俺、ほたるちゃんと付き合うことになった。一応報告な』と、絵文字も顔文字もスタンプすらない、味気なく綴られた文面を春凪に見せる。
本当はその後に春凪のことを心配するメッセージが続くのだけど、あえてそこは表示しないよう画面をスクロールして調整した。
今は春凪に、昨夜のことを思い出させるようなことはしたくないと思ったから。
「春凪にもほたるさんから幸せ報告の連絡が来てない?」
聞いたら、春凪がハッとしたように瞳を見開いて。
「スマホ……ずっと見てませんでした」
とポツンとつぶやいた。
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