38.心を鬼にして

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 果たしておめでたい席に、あんなことがあった指輪をして行くのは適切だろうか?と思ったら、ソワソワと心が(ざわ)ついて。 (ほたるが明智(あけち)さんと結婚するってなっても、私、この指輪を付けて参列するのはきっと無理だ)  半ば無意識。  大切な親友のおめでたい日に、怖い思い出を連れて行くのはイヤだ、って思ってしまっていることに気が付いて、私はハッとした。  婚約期間だって、色々あってあやふやだった私たちだ。  元々そう呼べる期間自体がそんなに長かったわけじゃないのに、その貴重な時間を不本意とは言え、私のせいで削ってしまったこと。また指輪には罪なんてないのに、今後もそれを付けることを躊躇(ためら)ってしまう自分に、少なからず罪悪感を感じてしまう。  そんな私に、宗親(むねちか)さんがニコッと笑って、「春凪(はな)ならきっと、そう言うだろうなと思って……勝手なんですが珠洲谷(すずや)さんに頼んでコレを用意してもらいました」って言うの。  珠洲谷(すずや)さんといえば、婚約指輪を買うときにお世話になったジュエリーショップのオーナーさんだ。  そんなことを考えながら宗親さんに差し出された数枚の紙片を手に取った私は、瞳を見開いた。 「これって……」
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