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【side宗親】
女性陣二人がボックス席に移動して何やらコソコソやっているのを尻目に、僕は仕方なく取り残された明智と二人、よく冷えた黒ビールで仕切り直す。
「――とりあえず恋愛成就おめでとう、でいいのかな?」
言ってグラスを掲げて見せたら明智のやつ、「そこは素直におめでとうって言い切れよ」と苦笑しつつも、「けど……まぁ。背中押してくれてサンキューな」とやけに素直な反応。
「真っ直ぐ過ぎて何か気持ち悪いんだけど」
その態度に思わず本音を漏らした僕に、「織田。お前最近口調が砕けてきてだいぶ話しやすくなったけどさ……嫁さん以外には塩対応なトコとかは嫌んなるくらい全然変わんねぇよな」と苦笑される。
そんなの当たり前じゃないか。
「だったら聞くけど……明智は僕に甘々対応されたいの?」
ククッと笑いながらビールを口に含んだら、「ご冗談を」と肩をすくめられる。
「――あ、そういやぁ織田こそ結婚おめでとうな?」
もちろん明智は式にも来てくれたけど、バタバタしてゆっくり話せなかったから、こんな風に改まって祝いの言葉を言われるのは初めてだった。
「有難う」
Misokaで大学生の頃の春凪を見かけて以来、僕は明智にだけは彼女への恋心を隠さずに打ち明けた。
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