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「そうしたいのは山々なんだけど……母と父の圧力でそこは無理っぽいんだ」
溜め息を落としながら「春凪は織田にとっても、大事な嫁になってしまったからね」と付け加えたら、明智があからさまに驚いた顔をした。
「織田にとってもって……。お前、そんなに従順な息子だったか?」
こと、春凪が絡んだら僕が一筋縄ではいかないことをよく知っている明智らしい物言いに、僕は思わず笑ってしまう。
「まぁ春凪絡みなら尚のこと、僕は普通なら絶対に言いなりになんてならないよね」
そこでグラスの中の黒ビールを一気に煽ってから、「酒ばっか飲んでたら悪酔いしそうなんだけど……僕たちの方にはつまみ、ないの?」と、空になったグラスを明智に手渡した。
「白ビール」
黒ビールは少し癖が強いビールだ。
お代わりするなら通常のビールよりも苦味が少なく、フルーティな甘みを感じられる白がいいと告げた僕に、明智は一瞬だけ眉根を寄せると
「ちったぁーペース落とせよ?」
言いながらもお代わりのグラスとともに、冷蔵庫からエビとスモークサーモンの生春巻きを出してくれる。
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