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「――で、例の男。どうなりそうなんだ?」
苦々しい気持ちでビールを飲んでいたら、不意に明智からそう問いかけられて、僕は小さく吐息を落とした。
「日本の警察は優秀だ。幸いあの男に奪られた指輪はオーダーメイドの一点ものだったし、すぐに足がついて捕まったよ。ただ――」
事件があった翌日、僕は懇意にしている宝石店オーナーの珠洲谷さんにすぐ電話を掛けて。
発注した婚約指輪の最終デザイン画の複製書類をなるべく早く準備してもらえるように頼んだ。
それを持って即行警察や古物商なんかに根回しして、同じデザインのリングが市場に出回ったらそれを持ち込んだ人間を一網打尽に出来るよう手配したんだ。
春凪から途切れ途切れに聞いた話から、あの男が金に困っていたことは分かっていたし、遅かれ早かれ指輪を現金化しようとするだろうことは容易に推察出来たからだ。
だけど、あの男。僕が思っていた以上に相当ひっ迫していたんだろうな。
予想よりかなり早くに動きがあって、捕まるの自体は相当早かった。
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