40.記憶と結びつくもの

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「お返し?」  フルフルと震える手でリボンの掛かった小箱を差し出す私に、宗親(むねちか)さんが怪訝(けげん)そうな声を出す。 「はいっ。頂くばかりで私、何もお返し出来ていなかったので――」  再度そう言った私に、宗親さんが小さく吐息を落としたのが分かった。 「宗親、さん……?」  その溜め息にギュッと心臓を握られて、不安が一気に背中を駆け上がる。  私、何か間違えた?  オロオロと不安を隠せないままに宗親さんを見上げたら、「僕はキミに何か返して欲しいなんて思ったことないんだけどな?」と悲しそうな顔をされてしまった。 「えっ。あの、でもっ」  それでも尚も言い募ろうとした私の唇をそっと人差し指の腹で押さえると、宗親さんが言葉を続ける。 「僕がすることで春凪(はな)が変に負い目を感じるのは凄く困る。キミを甘やかしたいのは僕のワガママだし、ずっと恋焦がれていた春凪に色々したいって思うのだってそうだ。正直に言わせてもらうと、僕は春凪がそばにいて笑っていてくれるだけでこの上なく幸せなんだ。お返しをしてもらうようなことは何もしていない。――(むし)ろ」
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