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「あ、あの、やっぱり……」
ご愛用の品があるのに、こんなの贈られても迷惑だよね。
そんなの、いつも宗親さんと一緒に居たら嫌と言うほど分かっていたはずなのに。
それを自分色にほんのちょっぴりでいいから塗り替えてしまいたいと思ってしまったと言ったら、呆れられてしまうかな。
宗親さんの腕の中、オロオロとする私を彼がギューッと抱きしめてきた。
「これ、春凪が選んでくれたの?」
そのまま耳孔に吐息を吹き込むみたいに問われて、私は背筋をゾクリとした快感に撫でられながら懸命に頷く。
「え、選んだって言うか……お、お店の方にその……ちょ、調合して頂いた、んです……」
私いま、絶対耳まで真っ赤になってしまっている。
髪の毛をかき上げられていなくて良かった、って心底思いながらしどろもどろに応えたら、宗親さんが箱の中から香水の入った小瓶を取り出しながら「調合?」ってつぶやいて。
「い、イメージをスタッフさんに伝えたら……その、それにぴったりな香りを調香師さんが作ってくださって……それで、その……」
私が「こういう香りが作りたいんです」と漠然としたイメージをエバリュエーターと呼ばれるクリエーターさんにお伝えしたら、その方がそれを具体的な形に明文化して調香師さんに指示してくださって。
手作り香水の事なんてさっぱり分からない私は、出来上がった香水を入れる容器や、それを飾る装飾――シールやキャップに至るまで、何から何までエバリュエーターさんに相談しまくった。
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