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「……滅茶苦茶嬉しいんですけど」
宗親さんが私を抱きしめたまま小さな声でそうつぶやいて私の肩にそっと額を乗っけてくる。
私は聞こえるか聞こえないか分からないような彼の声音に、思わず肩口の宗親さんに触れて思わず息を呑んだ。
「――っ!」
宗親さん、ひょっとして物凄く照れてるっ!?
お顔は伏せていらっしゃるし、間近過ぎて首をひねってみても表情までは見えない。けれど、何の気なしに伸ばした指先が宗親さんの耳に触れた途端、私、その熱さに驚いたの。
「宗親さん……?」
ずっと耳に触れていたら彼の熱が伝染ってきてしまいそうで、私は指先を慌てて肩の辺りをくすぐる宗親さんの髪の毛に転じさせた。
触るともなしに宗親さんの髪の毛を指先に遊ばせながら呼び掛けたら、耳元で小さく吐息を落とす気配がして。
「嗅いでみてもいい?」
ふっと肩口が軽くなって、宗親さんが顔を上げられたのが分かった。
「……もちろんです」
そう言っては見たものの、宗親さんの余りにも嬉しそうな反応に物凄く彼の中の期待値を上げてしまっているような気がして。気に入ってもらえなかったらどうしよう?とにわかに不安になる。
「あ、あのっ、もし気に入らなったら遠慮なく言ってください」
それで予防線を張るみたいにそう続けたら、クスッと笑われてしまった。
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