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「宗親さ、……私ばっかり……恥ずかしぃ……です」
消え入りそうな声音で一生懸命そう訴えたら、「ホントは……もっともっと春凪に恥ずかしがって欲しかったんだけどな……。残念ながら僕の方がもう限界みたいだ」と宗親さんが切なげに吐息を落とす。
その声に、私は思わず宗親さんを振り返ろうとして、「ほら。鏡から視線を逸らしちゃダメでしょう? 春凪」と、彼からたしなめられてしまう。
宗親さんは私から少しだけ身体を離すと、何の躊躇いもなく着ていたものを全部脱ぎ捨てて。
「ここでそのままでもいいんだけど……色々障りがありそうだしお風呂、行こっか?」
一糸まとわぬ姿で背後からギュッと私を抱きしめた。
私は彼に抱き寄せられてその場でほんの少しよろめいて。
「――っ!」
足元に敷かれたマットがぐっしょりと濡れている個所を踏んで驚いてしまう。
宗親さんがおっしゃった〝障り〟が、私が溢れさせた愛液のことだと気が付いて、申し訳なさに縮こまったのは言うまでもない。
(後でちゃんとマットも下着も脱ぎ捨てた服も洗わないと――)
マットの傍に乱雑に散らばったお互いの服を横目に、熱に浮かされた頭でぼんやりとそんなことを思った。
***
シャワーの流水音と、湯煙の中。
曇らないよう熱線の入った意地悪な姿見に全身を映されたまま、私は背後の宗親さんから視線を逸らせない。
宗親さんが私に欲情してくれていると思ったら、恥ずかしいはずなのに子宮の奥がキュゥッと疼いて、彼のことが欲しくて堪らなくなる。
「宗親さん、私、もう……」
危うく自分から彼が欲しいとおねだりしそうになって、慌ててキュッと口をつぐんだ。
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