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お風呂でさんざん甘やかされて。隅々まで愛し尽くされて。
私、宗親さんの腕の中。そのまま温かなお湯に蕩けてなくなってしまいそうな錯覚を覚えてしまった。
お風呂から上がってからもほわほわと夢うつつだった私は、宗親さんに促されるまま彼が用意して下さったドレスにいそいそと着替えて。
どうにかこうにか十五分足らず。超特急で身支度を整えてから彼の愛車――黒のハリアー――に乗り込んだ。
仕事の時とは違ってスーツをキチッと着こなした宗親さんは、いつもの数百倍カッコよくて。
照れるあまり、私は彼から不自然な距離を取ってぎくしゃくと宗親さんの後をついて車まで行ったのだけれど。
リビングで宗親さんと話していた時には予約の時間まで結構ゆとりがあるように思えたのに、車内にある時計を見たら十九時半を過ぎていて、今更ながらびっくりしてしまう。
(お風呂、長すぎたっ)
途端、浴室でのあれやらこれやらがぶわりと頭の中によみがえってきて、私はやたらと照れてしまった。
「――春凪?」
一人真っ赤になりながらヒャーヒャーなっていたら、宗親さんに怪訝そうな顔でキョトンとされて。
そのことに慌てるあまり取り繕うように「じ、時間っ。結構ギリギリですねっ」と言ったら、「春凪があんまり可愛かったから」と意味深に微笑まれた。
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