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私は宗親さんと二人きりにされてしまったことに何だか今更のように照れてしまって。
「給仕をしてくれるスタッフ、女性にして正解だったな」
フルートグラスを掲げて乾杯をした後、グラス越しにそんな私を見て宗親さんがクスクス笑うから、意味が分からなくてキョトンとしてしまう。
「え?」
宗親さんの言葉の真意が汲み取れなくて小首をかしげたら、「僕を無視してあんなにぼんやりシャンパンを注ぐところを凝視されたらさ。春凪が給仕係を見ているんじゃないと分かっていても妬けてしまうじゃないか」とさらりと告げられて。
私は宗親さんの言葉に、思わず瞳を見開いた。
「なっ、何をバカなことを……」
慌てて手にしたグラスをクイッと傾けたら、シュワシュワとした炭酸が喉を刺激して、小さくむせてしまう。
「春凪、大丈夫?」
途端宗親さんがガタッと席を立つ気配がして。
私は慌てて「だ、大丈夫です」と涙目で訴えた。
(ごめんなさい! こんな……。めっちゃ説得力ないですね)
テーブルマナーが完璧な宗親さんを思わず立たせてしまったことを申し訳なく思いながら。
ここが人目のあるレストランじゃなくて良かったと本気で思ってしまった。
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