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転職なさってからずっと帰りが遅かった宗親さんが、今日は珍しく早くに戻っていらしたのは明智さんに呼ばれたからかな?
そんなことを思うと同時、何だか凄く愛されているのを実感して慣れない感覚にむず痒くなってしまう。
宗親さんは、クリスマスの夜にハイランドホテルの一室で、お取り寄せの高級チーズ
・二十二か月熟成したオレンジ色のフランスチーズ『ミモレット』
・夏に搾った牛乳だけで作ったチーズ『コンテ・エスティーブ』
・フレッシュチーズのひとつであるブリア・サヴァランにレーズンをたっぷりとまぶした『プチ・テオドール』
・トリュフ入りのゴーダチーズ『ゴーダ・トリュフ』
・山育ちの羊乳チーズ『オッソー・イラティ』
で私を思いっきり喜ばせて下さったのに、今みたいに何でもない日にも当然のように私に珍しいチーズを買って来て下さるから。
「あ、甘やかしすぎですっ」
思わず照れるあまりそんな憎まれ口をたたいてしまった。
「春凪、素直じゃないですね。そこは一言、『有難う』でしょう?」
抱き締められたままクスクス笑われた私は、消え入りそうな声で「有難うございます」ってつぶやいた。
「よろしい。――じゃあこれは夕飯後に食べようね」
まるで神代組で管工事課長をなさっていた時みたいに私の頭をポンポンと撫でると、「先に風呂へ入って来ますね」とおっしゃってから、ふと不安そうに私の顔を覗き込んできた。
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