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「――っ」
急に至近距離で見詰められたことにドギマギしたら、「春凪、何だか顔色が悪い気がするんですけど……僕の気のせい?」とか。
私、努めて普通にしていたつもりなのに、宗親さんは本当に侮れない。
このところ何となく身体が重だるくてしんどかったんだけど、今日は特に辛くて。
「あ、あの……。ちょっとだけ身体が気怠くて」
夕飯も作るのが辛かったから、夕方にパン屋さんに出向いてデニッシュパンのサンドイッチを買って来てしまった。
「今日は朝から春凪が何となく覇気がなさそうに見えて……気になって早めに仕事を切り上げさせてもらったんだけど。……正解だったな」
今し方渡されたチーズは、元気がなさそうに見えた私のために、明智さんに頼んでオリタ建設まで届けに来てもらったらしい。
このところ連日のように二十二時を過ぎていた宗親さんが、今日は十九時前に帰宅なさったのはそういうことだったみたい。
申し訳なさに眉根を寄せて、「一日中家にいるくせにごめんなさい」って謝ったら「そんなの関係ないでしょう? 調子悪い時は遠慮なく僕に頼ってくれていいんです」って抱きしめる腕に力を込められた。
「春凪は体調不良でもお構いなしに無理しすぎるところがあるから」
それが、宗親さんとの結婚を機に仕事を辞めなくてはいけなくなった理由だったことを思い出した私は、面目なさに縮こまる。
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