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「身体も少し熱い気がするけど……熱は測ってみた?」
「あ。熱は大したことなくて微熱程度です。けど、何だか気持ち悪くて……。だからごめんなさい。夕飯も、せっかく買ってきてくださったチーズも、今日は食べられそうにないです……」
実はお昼も食べられなかったけれど、それを言ったら宗親さんを必要以上に心配させてしまうかも知れないと思って言わずにおいたんだけど。
力なく笑って宗親さんを見上げたら、「ねぇ春凪。もしかしてそれって……」と真剣な顔で見詰められてしまう。
宗親さんがいつになくソワソワなさっている気がして(そんなに心配なさらなくても少し寝たらきっと治りますよ?)なんて思いながらキョトンとしたら、「ひょっとして生理が遅れたりしてないですか?」って……。
――えっ!?
(言われてみたら今月の予定日っていつだった……?)
仕事を辞めてからあまり手に取らなくなってしまっていた手帳をいそいそと開いてみたら、予定日を二週間以上も過ぎてしまっていることに今更のように気が付いて。
「あ、あの……宗親さん……私……」
私の表情ですべてを悟ったらしい宗親さんが、
「検査薬買ってきます」
腕時計にちらりと視線を落としてから、そうおっしゃって玄関に踵を返した。
近所のドラッグストアは十九時閉店。今はまだ十八時半過ぎだから、急げばきっと間に合うはず。
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