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「それなら食べられそう?」
聞かれて、私はコクコクと頷いた。
「良かった」
よくよく話を聞いてみると、夏凪さんに金平糖を買うよう指示を出したのは宗親さんだったみたい。
会社で手土産に使うことがあるらしい老舗の手作り金平糖なら、粒も小さいし癖も強くない。
今の私でも口に出来るかも知れないと思われたんだとか。
「まさか……そのためにわざわざ?」
ここから京都までは新幹線で片道約二時間。ちょっとそこまで、の距離ではない。
「夏凪はルンルンで行ってくれましたよ?」
京都へ日帰り旅行が出来ると上機嫌だったらしい夏凪さんの姿が目に浮かぶようで、私は思わず吐息を落とした。
「宗親さん、公私混同は――」
「丁度他社訪問用の手土産も買わなきゃいけないと思っていたので、春凪のはそのついでです」
しれっとすました顔でそんなことを言う宗親さんのことを困った人だなって思いながらも、何だか憎めなくて。
「ついででも嬉しいです。有難うございます」
ちょっぴり含みを持たせてお礼を言ったら、「バカだな。春凪のがメインに決まってる」とポツンと落とされて、腰に回された手にほんのちょっとだけ力を込められた。
***
「きゃー。お二人ともすごくすごく可愛いですっ!」
宗親さんは小さい頃から整った顔をしていて。だけど、写真の中の彼は全てのパーツが幼くて愛らしいから、私はたまらなくキュンとさせられた。
ベビーベッドで眠る夏凪さんを見詰める小学生くらいの宗親さんの眼差しは、私によく向けられる優しいそれで。宗親さんが、心の底から夏凪さんを愛しておられるのが伝わってくる写真だった。
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