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表紙に『Munechika①』と書かれた、少し縁取りが黄ばんで年月の流れを感じさせるアルバムをめくったら、初っ端は生まれたての宗親さんのスナップ写真だった。
きっと病院で撮られたものだろう。
まだ所々に血の付いた白いタオルに包まれた宗親さんが、顔をしわくちゃにして泣いていた。
私はその写真を見るなり不意に不安になってぶわりと涙がこみ上げてきて。
「春凪さん?」
そばにいた夏凪さんに心配をかけてしまう。
そういえば夏凪さんのアルバムも、一枚目の生まれたての夏凪さんを見た時、胸の奥がギュッと苦しくなったのを思い出す。
その理由に気が付いた私は、それを誤魔化すみたいに当たり障りのない言葉を紡いだ。
「ご、めんなさ、……。私、妊娠してから……何、だか少し、情緒不安、定で……」
ポロポロとこぼれ落ちる涙を抑えられずに途切れ途切れに言ったら、夏凪さんがそっと背中をさすって下さった。
何も言わずに背中を撫でてくれる夏凪さんが、何となく宗親さんと重なって。
頭の中で、夏凪さんと宗親さんの生まれたての写真が交互にぐるぐるとめぐり始めてしまう。
そうして思った。
お腹の中の赤ちゃんはまだ男の子か女の子か分からないけれど――。
出来る事なら男の子がいいな、って。
***
「宗親さん。お腹の赤ちゃん――」
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