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生まれたての宗親さんの写真を見た瞬間、お腹の中の子が男の子だったら柴田の呪いが解けたようで嬉しいなとぼんやり思ったことに気が付いた私は、そんなことを考えている自分が嫌になって思わず口を閉ざした。
「春凪?」
そんな私を宗親さんが壊れものを扱うみたいにそっと腕の中に抱き寄せて。
「思ってることがあるなら……一人で抱え込まずに僕に全部話して?」
じっと顔を覗き込まれた私は、しどろもどろになりながら胸の中のどす黒い気持ちを吐き出した。
男の子でも女の子でも健康ならどちらでもいい。
そう思ってあげられないことに何だか嫌気がさして。
「……ねぇ春凪。うちの母や夏凪は織田の中で窮屈そうにしているように見える?」
私の話を黙って聞いて下さった宗親さんから静かに問われた私は、フルフルと首を横に振った。
むしろお二人とも生き生きしているように見える。
「じゃあ、春凪のお母様やおばあ様は今、どうかな?」
問われて、葉月さんと話して以来、柴田の呪縛から解き放たれた二人が、凄く幸せそうにあちこち飛び回っているのを思い出した私は「凄く楽しそうにしています」と答えた。
でも、だからと言って、父や祖父が邪見にされて居るということはなくて、みんなで一緒に温泉旅行へ行ったりしているみたい。
「春凪は?」
最後にそう問いかけられた私は、すぐそばで私を優しく見つめて下さる宗親さんをじっと見上げて。「とても……とても幸せです」と答えた。
「僕もね、春凪と一緒に居られて毎日がすごく幸せなんだ。だから――」
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