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そこで私のお腹にそっと触れた宗親さんが、「僕はこの子が男の子でも女の子でもとびっきり愛せる自信があるんだけどな?」と微笑んだ。
私は宗親さんのその笑顔を見て、漠然と抱えていた〝女の子だったら織田家に柴田の呪いを持ち込むみたいで何だか申し訳ない〟と感じていた不安がゆるゆると氷解していくのを感じて――。
男の子でも女の子でも……誰も私を責めたりしないんだ。どちらでも祝福してもらえるんだ、って……今更のようにそんな当たり前のことに気が付いた。
宗親さんが触れておられる下腹部。彼の手の上にそっと自分の手を重ねて。
――お腹の中のこの子が、どうか無事に生まれてきてくれますように。
――男の子でも女の子でもいいから。
初めて、心の底からそう願うことが出来た。
この子が無事に生まれて来てくれたならば。
葉月さんが宗親さんと夏凪さんにしたように、私もたくさんこの子の写真を残して……。
そうして家族の絆を深めていきたい。
そんな風に思った。
***
「春凪もうちの子も本当に可愛いね」
私は宗親さんに似ていると思うけれど、宗親さんは私に似ていると言う小さな小さな赤ちゃん。
私はまだ首もすわっていないその子が、懸命に私のおっぱいに吸い付いている姿を、ひどく穏やかな気持ちで見下ろしている。
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