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実は食器棚の手前にあのほのぼのした絵柄のマグカップを入れたのは、他ならぬ宗親さんご本人で、私じゃないの。
きっとあの子は、ここのホストである宗親さんに、場の空気を乱すことを許されてあの場にあるんだ。
――ねぇ宗親さん。私も……あの子と一緒だと思っていいですか?
よろしくお願いします、と返した後、食器棚を見詰め、窺うようにコソコソと宗親さんを見上げていた私に、
「春凪。分かっていると思いますが、ここはもうキミの家でもあるんですよ? だからね、春凪が居心地の良い空間にしていくのも大事なことだと僕は思っています。今のところ僕の好みに溢れ過ぎていてキミは落ち着かないかもしれないですが、少しずつふたりでいて落ち着ける空間にしていきましょうね?」
助け舟でも出すみたいに宗親さんがそう言って下さった。
まるで迷子の子猫みたいにソワソワと落ち着かない心地でいた私は、宗親さんからのその言葉にすごく救われて。
私愛用のナマケモノマグカップが、食器棚の中、一等目立つところに置かれたのも、もしかしたら宗親さんなりの配慮なのかも……?
私にとって心地良い空間づくりの一環だと考えたら、わざわざあそこにあれが置かれたことにすんなり説明がつく気がしたの。
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