足跡マーケティング

１

　今から俺も近所を練り歩く。
勿論、できた足跡をすぐに売りに出すつもりさ。
いくら何でも一文無しのままでは、
某法人が受信料を徴収しにやってきた場合に支払えないからな。
では、いってきます。いってらっしゃい。

　ただいま。おかえりなさい。
一人挨拶はさておき、これだけの足跡があれば今週いっぱいは凌げそうだ。
俺が履いていたのは、履物界のオールラウンダー スニーカー。
雪の降らない地域であれば、一年を通じて履くことのできる優れものだ。
ゆえに、足跡価格も群を抜いた安定性を見せている。
確かに数が出回っている分、レートはまずまず低いものの、
足跡模様の美しさには定評がある。
そのおかげで価格もある程度の水準に達しているぐらいだ。
足跡を作れば作っただけ換金できるなら、これに頼らない手はないだろ？
最近は、一攫千金を夢見て、マイナーシューズに手を出す素人が増えている。
でも、プロの俺に言わせれば、それは甘すぎる。安定こそ至高。

　一応、現在のスニーカーの足跡価格を確認しよう。
サンゴ礁が固まってできた沖縄県の地盤以上に安定している代物だ、
滅多に変動は起こらないはずだが……
う、嘘だ！　スニーカーの足跡価格がスリッパを下回っている！？
屋外設計とはお世辞にも言い難いスリッパは、
足跡界隈でワースト１、２位を争う人気の無さなのだぞ！
あり得ない。一体何があった？
原因を一早く究明せねば、本当に夕飯が自然の恵みフルコースになってしまう。