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マクが目を覚ますと、視界は真っ暗だった。
ここは……どこだろう。
僕は寝っ転がっているのか……?
身体中が痛いし、酷い耳鳴りがする。
左を向くと、前方と変わらずに真っ暗だった。
でも、右を向くと違った。
ぽっかりと穴が空いて、明るい。僕の身長くらいかな、、
「いてて、いて。」
全身かすり傷だらけだった。打撲もしてる。
僕はムクリと起き上がって、穴をよく観察すると、穴の先に見えたのは、岩肌と、ロープだった。
んん?どういうことだ?
イマイチ理解できなかったので、僕は穴に近ずいた。
近づくと耳鳴りが止んで来て、聞き覚えのある、だが情けない声が聞こえてきた。
「うおおおお、マックゥゥゥ!お前は良い奴だった!助けてやれなくてごめんなああ!!」
その情けない声で、僕はここが現実だと理解できた。
じゃあ、この岩肌は、向こう側の崖で、このロープは吊り橋の縄かな?
僕は穴の入口で、風に揺れるロープを眺めた。
「この際だから白状するが、この前油性のインクで顔にヒゲを書いたの俺なんだよぉぉ!!悪い事をした!許してくれええ!!」
おじさんの声が渓谷全体に響く。僕は恥ずかしさと怒りで顔をニョキっと、穴から出した。
「知ってるよ!バレバレだっただろ!!その程度の嘘で僕を騙せると思うな!!」
「うわあ!!でた!!生首!!!」
壁から突然生えたマクの頭におじさんは驚愕した。
「生首じゃないわ!!!」
「そっかあ、多分穴に入って転がって、衝撃が和らいで打撲だけで済んだんだね。」
「うん、多分そう。でも体が痛いよ。」
僕は頭を出しながらおじさんを見る。
結構な高さがあった。
おじさんは口に手を当てて、マクの救出方法を考えた。
「じゃ、その橋だったハシゴを登って来て!マック!」
上にいるおじさんを見ていたマクは、崖下を見た。
ここまで下の方に降りてきても底はまだまだ見えない。
「絶対に嫌だ!!!」
恐怖で登れたものじゃなかった。トラウマだ。
マクは吊り橋恐怖症になってしまったと自分で実感できた。
しかもこの吊り橋だけは絶対信用出来ない!
「そんなこと言わないで。軽く引っ張ってみなよ。丈夫だよ。」
「そうかなあ?」
マクがそう言って手を伸ばして縄を掴み、軽く引っ張っると、ブチリと音がした
「うわああああああ!!」
マクはすぐに頭を引っ込めた。
ハシゴの板がギロチンのようにガガガガガッッッと降り注いで、そのまま奈落へと落ちていく。
「どこが丈夫だ!殺す気か!!」
マクが叫びながら顔をニョキっと出したのを見て、おじさんはうーんとまた悩んだ。
「だとしたら、もうロープはない。しかも橋のように長いロープなんてそうそうないぞ。」
「えっ、」
じゃあ僕、ずっとこのまんま??
一瞬嫌な考えがよぎった。
「でもまあ運がいいことに、近くには植物が生えている。私が木のつるとか植物からロープを作ろう。良かったなマック。助かるぞ。」
「え!!ほんとに!?!?」
おじさんが神に見えた。満面の笑みで天国から地獄へスルスルとロープを下ろしてくれる神様。
「まあ2日かかるけどな、長いから。」
「2日……!!?」
でも一生いるよりはマシだった。
こうして、マクの暇なほら穴サバイバルがいざ始まる……!
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