マクと洞窟の宝

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「ダメだ。俺の取り分が少なくなる。それに危険だよ。生きて帰れる保証はない。」 「いいんだ。取り分は少しだけでいい。僕の先生に酒を奢ってやりたいだけなんだ。」 マクはおじさんに感謝していた。 1回語り合っただけの僕を危険な旅に連れて行ってくれて、面倒臭いだろうに、笑って面白く旅をしてくれた。 まだ1週間だが、その感謝は抑えきれなかった。 だが、稼ぐ特技も何も無いマクは、感謝を伝える術を持っていなかった。 それに、僕は今おじさんの金で旅をしていたから、自分で払えたら、なおいいと思った。 今日の宿は僕がだすよ。と、マクは胸を張っておじさんに言いたかったのだ。 「……いやダメだ。マクでもそれはダメ。」 カムスは譲らない。 「お願いだ。カムス。3000枚の中の50枚でいい。」 「50?」 カムスはちょっと迷ったようだった。僕は行けると思った。 「25!!」 僕は押した。 「25か…………それならいいよ。」 「やった!ありがとうカムス!君が生きれるように頑張るよ。」 「ああ、頑張ってとろう。」 こうして僕達は明日の夜の作戦を立て始めた。 「ただいま。」 宿へ帰るとおじさんが机に向かって何か書いていた。 野宿する時もたまに書いているな。 「おかえり……ん、ビアルは美味かったか?」 「げ、なんで分かったの……」 おじさんが笑いながら、ペンで僕を指して言う。 「顔が。赤いぞ?」 僕は顔に手をやった。熱い。僕はお酒を飲んだら顔が赤くなるのか…… おじさんはそのままクルリと机に向きなおり、カリカリと書く。 「おじさんいつも何書いてるの。」 僕は軽装に着替えて、敷布団へ入る。 「ん?これか?ただの日記だよ。」 「へぇー。」 そしてしばらくカリカリという音だけ、部屋に響いた。 「今度見せてよ。」 沈黙を破ったのは僕だった。 「ぜっったいだめだ!!!」 おじさんは過剰に反応する。 「ええー、別に減るものじゃないんだからいいじゃないか。」 「マックは日記を書いたことがないからそんな事言えるんだ。」 「隠されたら気になるなー。」 「絶対に見るなよ。見たら怒る。」 「ますます気になるなぁー。」 僕は机の上のロウソクがちょっと眩しくて、頭まで布を被る。 「あ、おじさん。」 「なんだいマック。」 「今日僕達と同じ北への旅人にあったんだ。」 「ほう。それは珍しいな。」 おじさんは優しい声で返した。 「それで、そいつは僕と違ってお金持ちなんだ。おじさんの負担にはならない。 もし彼が北へ行くんだったら一緒に3人で行った方が楽しいと思って。」 「なるほど、それはそうだな。」 おじさんは口に手を当て考えて、言った。 「彼と俺が話をして、俺が大丈夫だと思ったら一緒に北へ行こう。」 「本当に!?」 おじさんがそう簡単に許してくれるとは思わなかった。 「彼がいい時に一緒に食事でもしよう。」 「ありがとうおじさん!」 「仲間は多い方がいいさ。」 僕はそれを聞いて安心した。 もし宝が取れなくて悲しくても、カムスは悲しく1人で北へ行かなくて済んだと思ったからだ。
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