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次の日の夜。
カムスと待ち合わせていた時計塔の下へ向かった。
おじさんは寝たのを確認してこっそりと抜け出してきたから、バレてない。
「よし。来たね、マク。じゃあほら穴へ向かうぞ。」
「……うん!」
僕はおじさんに貰った短剣を腰に指して、念の為にロープとか色々持ってきた。
内心ドキドキした。
死ぬかもしれない怖さと、宝を絶対持って帰るという強い意思が、
頭の中で混ざり混ざって爆発しそうだった。
1回山のてっぺんへ昇って、ほら穴の上の方へ来る
「洞窟の入口に見張りがいるんだ。椅子に座って多分ウトウトしている。そいつを縛って動けないようにする。」
そういった作戦だった。洞穴の上からマクは頭を出した。
盗賊らしき人物が椅子の背もたれにお腹をくっつけて、寝ている。
「よし。一気に縛るぞ。俺が抑えるからマクは縛ってくれ。」
「分かった。」
僕達はとても小さな声で言うと、ロープと布を持って飛び降りた。
カムスは男を蹴り飛ばし、地面へ押さえつけた。
そこでマクが素早く口に布を巻き、次に手と足を縛ってぐるぐる巻きにした。
「よし。やったぞ。これで安心してお宝を狙える。」
カムスはそういった。
「でも中に獣がいるかも知れないよ。」
「……そうだな。気をつけていこう。」
洞窟の中へ、僕とカムスはずんずんと進んで行った。
中は遺跡のような紋章の入った柱と古いレンガが灰色に綺麗に並んでいた。
人は1列で並んだ方がいいくらいの狭さだった。
「おお……」
僕は思わず声が出てしまった。
危険で、宝があると、僕でもわかった。
松明に火をつけて奥へと進む。
「……見ろ」
カムスはそう呟いて前を照らした。
マクが見ると、そこには頭に矢の刺さった寝ている盗賊らしき男がいた。
いや、寝ている訳では無いのだろうとマクは分かっていた。
だが寝ていないのだとすると……そういう事になる。
とても怖くて考えられそうに無かった。
「人が……寝ているのを見るのは初めてだ。」
マクはそう言って視線を左に背けていた。
「……そうか。」
カムスは察して死体とは言わなかった。
「カムスは大丈夫なの?」
僕は不思議でたまらなかった。
「俺はなんだろう。初めてだけど平気だ。」
すごい人もいるものだと感心した。
おじさんも平気なのだろうか。
「きっと罠があるに違いない。ほら。」
足だけを前に伸ばして床を探ると、カチッと音がして矢が飛び出した。
「ちょっと!前から飛んできたら死んじゃうよ!!」
「よく見ろ。左から刺さってる。だから探ったんだ。」
「ほ、本当だ、うっ」
僕はちょっとしか盗賊の頭を見れなかった。
そのタイルをまたいで行くとまた盗賊が寝ていて、また進むとまた寝ていた。
お眠さんが多いなあ……マクはそう現実逃避をする。
結構奥へ来て、カムスはピタリと止まった。
僕は軽くカムスの背中にぶつかる。
「カムス?」
「マク。見ろ……いや見なくてもいい。」
とても血なまぐさい匂いがした。
ひと1人分あったレンガの洞窟は、急に天井が半分下がっているようだった。
その半分天井が下がった所の右側が、黒く赤く染まっていた。
いや、これはもしかして、左から半分壁が押し出て、人の上半身を押し潰したのでは無いのか。
人の足だけ右側にぶら下がっているもん。
「うぐっっ。」
僕は出てきそうになったものを飲み込んだ。
大量の血の匂いと潰されなかった足にやられそうだった。
「頑張れマク。きっともう少しだ。」
僕達は上半身を潰された盗賊の足の横をくぐって、進んだ。
そして僕達は広い空間へ出た。
青やピンクに発光しているクリスタルが
壁や、壁の隅に散りばめられ、それはとてもとても綺麗だった。
「わああ……」
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