マクと洞窟の宝

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「見て、マク」 惚けていた僕に、カムスは宝箱を指さす。 部屋の奥にそれはあった。 クリスタルで装飾された綺麗な宝箱だ。 青白くどっしりと構えている。 後ろに女神のような女性の像がたっている。 何か文字盤を持っているようだ。 「あれかな、暗号って。」 「ああ。そうだ。そうに違いない。」 カムスはゴクリとつばを飲み込んだ。 「……よし行こう。」 僕が進むとカムスはさっきと打って変わって進もうとしない。 「どうしたんだよ。カムス。」 「おかしい。死体がない。」 確かに寝ている人はいない。 「逆に安全ってことじゃないのかな?」 「分からないだろう。さっきは俺が前を歩いてたんだから、マクが前を歩いてよ。」 確かにそうだった。僕はさっき後ろからついてきてるだけだった。 「ようし……わかった。」 そういうと僕はすり足でゆっくりゆっくりと足を前に伸ばしながら歩く。 石橋を叩いて渡るとはこういう事なのだろう。 ジリジリと歩いて、女神像と宝箱に近ずいて行く。 突然何かを踏んでしまって、壁が落ちてきて潰れたら…… 僕はさっきの男の足を思い出して座り込みそうになった。 でも後ろではカムスが見ているんだ。かっこ悪いことは出来ないと、 頑張ってジリジリと前へ前へと進む。 ようやく僕は宝箱の前へたどり着けた。 2人とも無事だ!良かった。 宝箱は青白く、所々ピンクにキラキラ輝いている。 触れると、とても丈夫そうで、絶対に力ずくでは開きそうにないと思った。 そして今度は女神像の手に持たれた文字盤の暗号に目を移す。 僕は文字を読み始めた。 「宝を欲するものよ。神へ貢物を捧げるがよい。」 「宝は小さき供物などでは決して開きはしない。より重く、悲しみ、大切なものと引替えによって開かれる……」 「一番大切なもの……」 「1番大切なものって……」 僕はそう考えながら石版をじぃっと眺めていたら、 ドスリと背中に衝撃が走った 「え?」 一体何が起こったか分からなかった。 僕が顔だけ後ろを振り向くと、 そこにはニィっと悪魔的に笑みを浮かべているカムスがいた。
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