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「カム……ス……?」
僕の足首に何か暖かいものが垂れて来ているのを感じた。
お腹を見ると、銀色の刃先が僕の体から生えている。
「1番大切なもの……それは、命だよ。マク。ヒヒヒ。ハハハハッ」
僕は……刺されたのか……?カムスに……?なぜ??
「カム、サエル……!!ゴフッ!!」
僕の口から何かが出てきた。
大きな青白い宝箱は一気に赤く染まってしまったのを見て、それが血だと理解できた。
僕はよろめいて、宝箱に倒れ込んだ。
苦しい。苦しい。苦しい。
呼吸がしづらい。息が出来なくなりそうだ
「マク。全部嘘なんだよぉ。よく騙されてくれた!ありがとう!感謝するよ。君のことは宝を見る度思い出すことにしよう。
……まあ?すぐに売り払うけどなぁ!ククク」
カムサエルの言ってることが理解できなかった。
「俺は盗賊の一員なんだよ。さっき死んでたのは俺の仲間。この洞窟も酷いことするよなぁぁ?」
「お……まえ……」
「俺ら盗賊団がこの洞窟を見つけたことは本当だ。けれど、ここで仲間を殺すなんて事はできないよな。
俺たち盗賊は仲間との情が熱いからさ?」
「そこで見つけたのは旅人のお前!マク!君だよ!」
失血で意識が遠のいていく……
「まあ1日喋っただけでこんなに簡単に引っかかってくれるとは。まあよかったよかった。このままここで反省しながら腐って死ぬといいよ。ククク」
「……」
「まあ、お宝は君がいなかったら手に入れられなかった訳だから、ちゃんと心臓を刺して置いたぞ。
あまり苦しまずに死ねるな?よかったなあ??」
「……」
「ちっ……もう死んでるのか。さすがに早いな。」
動かなくなったマクの背中に言葉を吐き捨て、カムサエルは宝箱へ近づく。
マクは力なく、動かない。
「どけよ邪魔だ。」
カムサエルは、宝箱の上で突っ伏して倒れていたマクを蹴ってどかした。
マクは目を瞑って仰向けになって地面へ倒れる。
「チッ。血まみれじゃねえか汚ねえなあ……」
カムサエルは箱に手をやった。
ギィ。と箱の軋む音がする。
「おお、本当に開いているぞ、マク。これで死んだ仲間も大喜びだ。ありがとうなぁ。」
もはや聞こえていないであろう、マクに話しかけるカムサエルは、持ってきた袋に宝石や金貨を詰め込み出した。
「ああ、大喜びだな。」
カムサエルはギョッとしてマクを見た。
だが、さっきと変わらずに天井を向いて倒れているだけだ。
幻聴か??カムサエルはほっとして汗を拭う。
「こっちだ。」
急に後ろからカムサエルの首が締められた。
太い腕で固くロックされてる。苦しい。
「ぐっ、かっ、誰だお前はっ」
「俺か?俺はマックと一緒に旅をしている者だ。聞いていなかったか?」
こ、こいつがそうか。だが、宿で寝ているのを確認して来たとマクは言っていたはずなのに。
「た、確か入口は5人の仲間が見張っていたはずだ!!なぜお前がここにいる。」
「ああ、入口の盗賊か。」
おじさんは思い出したように言う。
「……殺したよ。」
「て、てめえ!!」
反抗しようとすると、首がグイグイ締まる。カムサエルは動けない
「怪しいと思ったんだよ。旅路が一緒の者なんてそうそう居ないからな。」
「お前……嘘ついたんだろ?マクの共感を得るために」
「っっ!」
カムサエルは動揺する。
「それにマックは自分から他人に話しかける性格ではないから。話しかけてきたやつが偶然旅人で?偶然行き先が同じだなんて。
きっと何か騙されれるんじゃないのかなって。そしたら案の定コソコソ夜中に抜け出すし。」
ギチギチギチと、腕のくい込む音がする。
「そしたらこうだ。……君がマックを刺したんだな?」
カムサエルは必死に腕を外そうとするが外れない。
「ちっ、くっ、だったらなんだ。もうこいつは死んでる。宝箱が開いているんだからな。手遅れだぞ!ククク」
「……そうか。」
旅人は冷静な目でマクを見る。
血が、背と腹から流れて、顔は力のない表情で、目をつぶって倒れている。
おじさんの顔の中に、静かな怒りが湧いている様だった。
「……じゃあ君も同じく死んで貰わないとね。」
おじさんはそう優しく耳元で言って、
盗賊の首をありえない方向へ曲げた。
「カピッッッ」
言葉と言うよりは奇声に近い声を上げて、盗賊はその場で倒れ込んだ。
「貢物は君がなるといい。」
おじさんはそう倒れた盗賊に言うと、すぐにマクの元へ駆け寄った。
マクの顔は相変わらずそのままであった。
おじさんはマクをゆっくり抱き上げると、そのまま出口へと急いで走っていった。
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