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「ん、んん。」
目を覚ますと知らない天井だった。
横を見ると、病室らしき風景と、椅子にくつろぐおじさんがいた。
僕が首を動かした音に気づいて、おじさんはこっちを見る
「おお、気づいたかマック。」
「お、おじさん……うっ。」
背中とお腹が痛んだ。なんで痛いんだろう。
「良かったー!マック死んだかと思ってたよ。」
「え!?僕が死ぬ!?……なんで!?」
「いや?カムサエルくんがもう君のことをだね……」
おじさんが話してる途中で、僕は思い出したように言う。
「あ、カムス!洞窟!」
「ああ。?思い出したか?」
「うん。宝箱を見つけて、近ずいて……えっと、どうしたんだっけ。」
おじさんの顔から表情が消える。
「……マク、覚えていないのか。」
おじさんはこちらをじっと見ている。
僕は顎に親指を当てて思い出す。
「ええっと、うーん……どうしても思い出せない。」
思い出そうとすると、頭がズキズキと痛んだ。
「ふむ。そうか……」
おじさんは口に手を当てて、考えた後に言った。
「俺が説明してあげよう。マック。」
「おじさん知ってるの?」
おじさんはいなかったと思うけど……
「マックが家から抜け出した時、俺は起きていた。夜中に抜け出してどこに行くか気になったから、俺もついて行ったんだよ。」
「ああ、そうなんだ。……おじさんにバレてたんだね。」
まさかおじさんが着いてきていたとは。知らなかったな。
カムスに悪いことをした。
「ずっと遠くから追ってたよ。そしたら君達は洞窟に入って行くじゃないか。俺もその後を追っかけた。」
「俺が、奥の部屋のマックにたどり着いた時だった。気づいたら盗賊も10名入ってきてね『俺たちの宝の前で何してるんだ。』って言ったんだ。」
「え!!盗賊が!」
きっと、入口で縛った盗賊が逃げて、仲間を呼んだんだ……
マクはそう確信した。
「そうだ。そんで俺と、マックとカムサエルだっけ?3人は囲まれて、盗賊達と戦ったんだ。激しい戦いだった。そのせいだろう。君の記憶が抜けているのも。」
「そう……なんだ。」
だから僕は傷を負っているのか。
うーん。思い出そうとするけど思い出せなかった。
そしてはっと気づく。
「そうだ!おじさん!カムスはどこ?」
「……」
おじさんは腕を組んで何も話さない。
僕はその様子を見て察する。
「そんな。カムスは死んだの?」
「君だって死ぬ手前だったんだ。しょうがないさ。」
おじさんは足のつま先をトントンと打っている。
きっとカムス救えなかった自分に苛立っているのだろうな。
「まあ、これが旅でもある。そう辛い顔をするな、マック。それにもし、またこんなに楽しい事するんだったら俺も呼ぶんだぞ。君はまだまだ弱いんだ。」
「ッッ。別に……分かってるよ。呼ぶ。」
おじさんに言われて、僕は少し悔しかった。だけど本当のことだ。この傷が、痛みが、それを物語っているのだ。
「偉いな。」
悔しさの中に、ふとおじさんの優しい声が心に響いた気がした。
おじさんはソファからギッと起き上がって、フルーツを手に取ると、僕に投げた。
「お腹空いてるだろ。食っとけ。」
「うん、ありがとう。」
「他に食いたいものはあるか?」
……何故か言葉が心に染みるような感じであった。
「……魚が食べたい」
「よしきた!買ってきてやろう!」
おじさんはゴツゴツとした大きな袋を、
よいしょおお!!と担いだ。
「いやいや!!ちょっと待って!!!それなに!?!?」
おじさんはキョトンとした顔で言う。
「え?お宝だけど?」
「ちゃっかり全部持ってきてる!!」
抜かりないな!この人!!
「そりゃそうだろぉー。お金が落ちてたんだからさ?拾った。マック……命を助けたからこれ全部俺のな?」
「ええ!?そんなぁ!」
「命が……助かったんだぞ?」
ニヤニヤと笑うおじさんに僕は、くっそお……と苦い顔をする。
「じゃあ、ビアルと魚奢ってください。」
「よろしい!!マクくん!おっきい魚買ってくるぞ!ガハハ。」
そう言っておじさんは豪快な足取りで、部屋を出ていった。
そして数分後、大きな焼き魚2本をもって病院に入ろうとして、入室拒否されるのであった。
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