マクと洞窟の宝

9/10

9人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
「……マック。考えたんだけど。お金って重くないか?」 どっしりと金硬貨の入った袋を床にドンジャラと置いて、そうおじさんが言い出した。 僕は少しの間腕を組んで考えた。 そしてこう答える。 「絶対にそうですよ!!」 目は輝き、お酒と魚が脳を埋めつくした。 「……そうだよな!絶対に旅の邪魔だよなぁ?」 おじさんの頭に、牛肉や腸詰ソーセージ、ビールや魚、高価な菓子などが膨らむ。 「よし!!マック!!明日は退院祝いだ!!」 「やったあああ!!」 2人はヨダレをぐいっと拭って、目をキラキラ輝かした。 ………… 「やっぱとりあえず酒だろ!!」 おじさんはそう言ってドカッと席に着く。 「マスター!!ビアルください!」 僕は席に着く前に注文をした。 「おいっ、ずるいぞ!俺のもひとつくれ!マスター!」 おじさんは、先を越された!!と言わんばかりに注文を追加した。 「退院おめでとーう!」 「「かんぱーい!」」 久しぶりに飲むお酒は結構美味かった。久しぶりと言っても1週間くらいだけど。 なんか僕、定職に就いてる時よりビアルを飲んでいる気がする。 仕事してないのに…… 「うんまー!!スカッとするね!ビアルは!」 おじさんは白くなったひげを拭った。 「おじさんがビアルとか。なんか珍しいね」 おじさんはウイスキーをゆっくり飲むイメージがある。 「こういう盛り上がりたい気分の時はビアルなんだよっ」 僕の事をツンッと肘で小突いてきた。 確かに前飲んだ時よりテンションが高い。 ちょっとウザイ。 けど楽しいからまあいいか。 ………… だいぶ酔っ払ってテンションが上がってきた。 おじさんがトイレから帰ってくる時に、綺麗なお姉さんとすれ違う。 「見たかマック!!あのおねえさんべっぴんだったぞ!!」 席に座りながら、おじさんはマクに報告した。 「ええ?見てなかったよ。ヒック。だれ?……あー確かにそうだね。うん」 赤いキラキラとしたドレスをまとった、ブロンドのお姉さんだった。ボンキュッボンで、美人。 男性に度々話しかけられてそうだな。 酒場で働いていたから僕にはわかる。 「俺さ……あのおねえさんと遊んでくる。」 ガタリとおじさんは、席を立った 俯きながら、その顔には影を落としている。 「あ、遊ぶってまさか……おじさん……!!」 僕はまさかを想像してドキリとした。 こんなまだ若い僕の目の前でそんな事を言うなんて…… いや、もしかしたら見当違いかもしれない。 僕はおじさんの言葉を待った。ゴクリ…… 「そのまさかだ。お姉さんと遊ぶって言ったらあれしかないだろう。」 ニヤニヤとマックの事を見ながら、おじさんは自分の背中に手を伸ばした。 「じゃーん!!!ツイスターゲーーム!!」 「!!!」 「やっぱこれだろ!!マック!!お姉さんの息遣いが聞こえるほどの近くで密着!! そしてギリギリで重なり合う身体!!くぅぅーー!!たまらん!!このゲーム流行って良かったなぁぁ!!」 「…………」 僕はそれを聞いて黙る。 そして、無表情でゆっくりと立ち上がり、大きく息を吸って、 おじさんに指をさして言い放った。 「エッチだ!!そんなのエッチじゃないか!!!!」 おじさんはそれを聞きくと、腕を組んで、へんっっと鼻で笑う。 「何を言ってるんだマック。これはゲィムだ、ゲィム。全然なんにもエッチなんかじゃあない。 もしかしてマック。女の子とツイスターゲームやったことないな??」 僕はギクッとして、顔を逸らす。 「別にやったことあるしツイスターゲームくらい……」 虫のような声だった。おじさんはそれを聞き逃さない。 「じゃあ3人でツイスターゲームしような!経験者だからマックできるよな?」 「……いいよ!?やってやるよ!!」 僕はもう、どうにでもなれ精神でプライドを守った。 「そう来なくっちゃ……!!」 おじさんはそう言って、右腕を僕の肩に回し、左手に酒を持った。 緊張した少年と、旅人のおじさんは、お姉さんの方へ歩いていく。 マクの心臓は、期待と緊張で張り裂けそうだった。 …… 「はあ、お客さん。飲み過ぎなんじゃないですかね。」 マスターはため息をつく。 「いいんだ!飲ませてくれ!」 そこにはぐしゃぐしゃになったツイスターゲームのマットと、涙を流して酒を飲むおじさんと、期待を裏切られてショックと恥ずかしさを受けた、真顔の少年がいた。 マスターは、この人たちがツイスターゲームを断られて戻ってくるのを見ていたから、気持ちは分かる。 でも飲みすぎだ。 「お客さん、気持ちもわかるし、こっちは嬉しいけど、ぶっ倒れる前に戻りなよ。」 「今優しくするんじゃねえよ!うぅ。」 おじさんテーブルに突っ伏して泣いた。 その日の夜は、マクの案内でおじさんはマスターに肩を貸してもらって帰ったのであった。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加