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マクとボロボロの橋
マクたちが海沿いの街を出てから5日。
マクは歩くのに少し慣れてきたようだった。
「少し足が痛いけど、なんだか激痛とか、疲労もそこまでなくて、気持ちも落ち込まなくなってきた。」
「そうか!良かったなマック。筋肉は、同じ動きをずっとしていると、成長してそれが苦痛じゃなくなってくるらしいぞ。」
「そっかあ、僕の足はムキムキになってきているのか……」
嬉しいような、嫌なような……
上だけ細くて足だけバキバキは嫌だけど、歩くのは楽な方がいい。
そう考えながらもマクはおじさんの速度に合わせて後ろをついて行く。
「ふう……おじさん。次の町はどれくらい先なの?」
僕は、ベッドで朝昼晩いくらでも寝れる数日前を思い出して、おじさんへ聞いた。
「今日中には着くぞ?マク頑張れ〜!」
「え!うそ!今日中に!?」
マクは驚いて声を上げる。
5日目にして町にたどり着くことが出来るなんて、予想していなかった!
前は1週間ずっと歩いて、ようやく街につくことができたから、また一週間か、それ以上歩くものだとマクは思っていた。
「今日の夜にはお布団で寝れちゃうのかぁ」
「まあ、マックは敷ふとんだけどね?」
「う、うるさい!今日はじゃんけん負けないから!」
おじさんにからかわれて、ズンズンと大足で進むマクだけれども、内心は、お布団の喜びでいっぱいだった。
時々ニヤついてしまうほどに。
だがそれは絶望に変わる。
目の前に現れたのはボロボロの橋。
ふかーーい崖と崖の間。つまり渓谷に架けられていた。
結構、橋は長くて、所々板が抜けている
支えているロープは触れるとちぎれてしまいそうなくらいボロボロだった。
「うわあ……この橋渡んの……?」
僕は橋の横から崖を覗いた。
じ、地面がいくら目を凝らしても見えない。
「マジで??」
僕が崖を見ながら言うとおじさんは周りを見渡した。
「うーん、遠回りするところもないらしいな。となると、渡るしかない。」
「本当に言ってるの??おじさん。」
マクとおじさんが改めて橋を見ると、いきなりビュオオと風が吹いて、板が1枚崖へ落ちていった。
「…………お先にどうぞ、」
おじさんは静かにそう言った
「いやいや!!何言ってるの!!大人でしょ!!」
「いやいや!君だって小柄な大人じゃないか!!それにほら!体重軽いし!ね!さあさあ!」
おじさんはグイグイ僕を押す。
僕はくるりと回っておじさんの後ろに回り込む。
「ほら!ベテランの旅人の勇気!!見せちゃいなよ!!僕かっこいいおじさんの所みたいなあ!」
僕が押すとまたおじさんに押される。
「いやいや!ここは先輩後輩関係ないから!マクって足早いんだよね!駆け抜けちゃってよ!!」
「足速いなんて言ったことねえし!!嘘ついて押し付けないでよ!!」
…………
「分かったよマック。俺が先に行こう。」
「さっすがおじさん!!ベテラン冒険者!!」
先に折れたのはおじさんだった。
そうでなくっちゃ!おじさんかっこいいぞ!!
「はあー。俺こういうの苦手なんだよなあ。股間が冷えるよ……」
橋に打ち付けられたガタガタの杭に手を置いて崖を覗く。
底の暗闇は、まるで何も無い、死の世界を思わせた。
おじさんはブルブルッと身震いした。
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