マクとボロボロの橋

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「ようし。俺は男だ。やるぞ。」 おじさんは身体の筋肉を伸ばし始めた 僕はそれを見て、いよいよ渡るんだなとドキドキした。 怖さを紛らわすためにふざけてたけど、とても危ない場面だ。 1歩間違えれば速攻死ぬ。確実に。 奈落の底へ真っ逆さま。 底が、川か地面か分からないが、どちらにせよ死体はきっと拾って貰えないだろう…… 「よしっっ!!」 おじさんは顔を叩いて、橋の前に立つ。 僕はその状況と空気に息を飲んだ。 しばらくおじさんは橋を見つめて、唐突に動き出した。 「うおおおおおおお!!!!!」 叫び声をあげながら。しかも結構な勢いで駆ける。 駆ける!!? 「え!?走って渡るの!?!?危ない!!」 あんなに勢いよく橋を渡ろうとしたら、踏みしめたボロボロの板が抜けたり、衝撃でロープがちぎれる!! 「うおおおおおお!!!!」 声のままに走るおじさん。勢いよく板を蹴って、橋はギチギチギチギチと変な音を立てる。 上下に揺れて、今にも縄がちぎれそうだった。 今板が抜けておじさんが落ちたら!! 死ぬ……! マクの心臓バクバクした。 だが……結果何も起こりはしなかった。 両膝をついたおじさんが、はあはあ言ってる。 「どうだ!!見たかマック!!」 おじさんは向こう側の地面に大の字で寝転んだ。 地面にいることの安心感は凄いだろうな。 いいなあ。僕もあそこにいればいいのに。 ……次は僕の番だ。 僕に不安と恐怖が押し寄せてきた。 「はーー!!良かった良かった!マック!案外丈夫だから早く渡っておいでよ。」 言われてみると確かに、1回も板が抜けなかったし、杭が抜けそうになったりもしなかった。 本当にこれはしっかりした橋なのかもしれない。 おじさんはしかもドタドタ走って渡った。それなのに何も無いのだ。 もし何かあったとしても、僕がおじさんみたいにドタドタ走って渡った時だろう。 歩いていけばほぼ大丈夫だ。 僕はちょっと安心してきた。 「頑張ってみるーー!!」 僕はおじさんに大きな声で言った。 まあまあ長さがあるからだ。この橋は。 おじさんは返事変わりに手を振ってくれた。 僕は荷物を背負い直し、ぴょんぴょんジャンプして緊張を解したあと、 1つ目の板に、足を乗せた。 ヒュオー。ギイィ。ミチミチ。ミチミチ。 横から風が吹き、足を乗せた板がきしんで、 風で揺れた紐がしなる。 橋の板は僕の靴より大きくて、隙間からは底のない暗闇が覗いていた。 僕の顎から落ちた汗が、その暗闇に吸い込まれていった。 「大丈夫……大丈夫だ。マクゴナガル。」 マクは小声で自分に言った。 おじさんがドタドタと走った板。割れるはずがない。 足が小刻みに震える。寒くないのに寒気がする。 それでも、自分に大丈夫だと言い聞かせ、もう一歩マクは進む。 ギイィ………… 足の感覚がなくなってきた。麻痺してるのかもしれない。 おじさんをチラッとみた。 「……」 真剣な顔でこちらを見ていた。 マクはこの緊張で張り詰めた状況がたまらなく嫌になってきた。 「クソッッ……次の1歩でもう終わんないかな……これ……」 ボソリと僕はそう言って、 また1歩おじさんへ近づく。 ギイィ…… よし。この板も大丈夫だ。 そう思ってまた僕はおじさんを見ると、 視界が急に上へと動いた。
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