マクとボロボロの橋

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「おっっっおちっっ!!おごっっ!!!」 ありえないくらい心臓がばくんばくんして、目がクラクラした。 声も言葉言えるものではなかった。 気づいたら僕は落ちないように必死に板に掴まっていた。 そうだ。足もとの板が割れたのだ。 落ちそうになったのを、必死で手前の板にしがみついた。 落ちるっっっ落ちるっっっ!と、頭はパニックになっていた。 「マック!!!!」 おじさんはそう言うと、駆け寄ろうとして、 やめた。 橋からやはり変な音がするのだ。 ギチギチギチギチという音。 マックが足を取られた衝撃でだろう。 もし近ずいて橋を落としたら、2人とも死んでしまう。 「落ち着け!!マック!!落ち着け!!」 おじさんはマクにそう言うしか無かった。 だがマクはそれを聞いて、パニックの中に冷静さを少し持つ事が出来た。 そのままだと落ちるっ。 でもゆっくり身体を橋の上に戻して行けば…… 落ちない! そうだ!落ちない! ゆっくりでいい!ゆっくり戻すんだ。 マクは腕に力を入れて、下半身を引っ張る。 腕を板の上でピンと立てて、足を引っ掛けついに、板の上に乗ることが出来た。 「「ふぅーーー……」」 2人は同時に安堵のため息をついたのだった。 マクは、帰りたいと切実に思った。 実家がないので、どこに帰ったらいいのかは分からないのだけれど。 そして、マクは気づく。 あのギチギチという音が鳴り止まず、ずっとなっている事を。 「なんなんだろうこの音は」 「マク!!とりあえず早く戻れ!!」 「……え?」 おじさんが危険を感じてそういう頃には、もう遅かった。 マクの後ろの橋の縄がブツリと切れた。 マクは反射的に床の板に捕まる。 またマクは宙ずりになって、だけど今度はサーカスの空中ブランコのように板に捕まっていた。 そしてその空中ブランコは、物理的に向こうの崖へ向かって加速する。 「う、うわあああああああ!!」 「マック!!」 脳内でおじさんの声がゆっくりと響いた。 もうこれはダメだ。 諦めるしかない。 掴んでてもきっと、壁にぶち当たって、痛さで手を離してしまうだろう。 だってこの橋はまあまあ長い。 長い分スピードも出るのだ。 ああ、死んでしまうのか。 こんな……ところで?僕が?? 「まだ死にたくない!!!」 僕は足を崖の方へ向けて、受け身の体制をとった。 顔と手にぶつからなければきっと手を離さない。 足で衝撃を和らげて、生き残る!! 壁が僕の元へ迫ってくる。 タイミングだ!!タイミングを間違えるな!! マクの目は大きく開いて、額には汗が流れた。 「よし、よし!よしよしよしよし!!離すなあああああ!!」 バキャ!!カラカラカラカラカラン! ハシゴの板達が、崖に打ち付けられて響きのいい木の音が鳴った。 「マック!!大丈夫か!!」 おじさんはガバッと崖を覗いた。 宙をゆらゆらと、力無くハシゴが揺れていた。板が1枚だけ落ちていくのが見えた。 ハシゴの先端にはマクがいるはず。 マクがいる……はず…… おじさんの目が震えた。 いない……!! マクがハシゴのどこにもいないのだ。 いて欲しかった。 足が折れていてでも、そこに。 でもあの速さで壁に叩きつけられたら、手を離してししまうのは当然のようなものだった。 それでも、おじさんは目を疑った。 「嘘だろ……おい。」 おじさんは、広がる真っ黒な闇を見つめ続けていた。 マクよりも後に落ちていったハシゴの板が、地面に当たったのか、コーンと音をならしておじさんの耳に入ってきた。 マクはもう、地面に叩きつけられて居ることが理解できる音だった。 「クソッックソクソクソォッッッ!!マックゥゥゥゥゥゥゥ!!!!」 ウワアアアアとおじさんの叫ぶ声が、 渓谷の深い深い闇の底まで、響いた。
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